「闇という名の娘」 ラグナル ヨナソン:著 小学館文庫
ストーリー
フルダ・ヘルマンスドッティル、六十四歳。女性警部として実直に職務に励むも“ガラスの天井”に出世を阻まれ、数カ月後に定年が迫っていた。ある朝、年下の上司から二週間後に後輩に席を明け渡すよう急に指示される。最後に未解決事件を担当させるよう進言したフルダは、ロシア人女性不審死事件の単独捜査を始めた。当初は難民申請が通らず自殺したとされていた彼女だったが、やがて売春組織の関与が見え始める。真実に迫るフルダを待ち受けていたのは、あまりにも悲劇的な運命だった。アイスランド・ミステリの気鋭、待望の新シリーズ。
引用: 「BOOK」データベース
女性警部フルダ・シリーズ
第1作『闇という名の娘』
第3作『閉じ込められた女』
読むネコポイント
久々に夢に見ました。読んだ本がなんとも言えず消化不良時に起こる現象です。
イヤミスほど後味が悪いわけではないですが、悲しみを背負った主人公フルダに
過剰に感情移入したせいなのは間違いありませんね。
64歳の女性で、ひとりぼっちの生活。
生きがいは警察での仕事と、山登り。
ボーイフレンドが新たにでき、65歳で迎える定年後を一緒に過ごせるのでは、と期待したり諦めたり。
フルダの心の中は、葛藤でいっぱいです。
肯定と否定が繰り返されます。
恐らくそれは彼女の凄惨な過去からきたものではないかと、読み進むうちに分かってきます。
常に影がつきまとうフルダ。
幸せは手に掴めるほど近くにあるのに、決して手を出そうとしません。
アイスランドの広大な自然や過酷な寒さ、男性中心の警察社会、同僚や上司との摩擦。
フルダは退職までの数日間、いきががり上未解決事件を捜査することになりますが、
殺された移民管理施設に滞在していた、エレーナと事件に必要以上に入れ込んでいきます。
そして迎えるフィニッシュは圧巻。 夢に出てくるほど (笑)
三部作の1作品目です。続く2作が楽しみ。
個人的にはかわいい地名 ニャルズヴィーク が気になりました。
余談ですが、フルダを日本映画で演じるなら樹木希林さんですね〜
おすすめ本
小説「闇という名の娘」に興味を持った方には、次の小説もおすすめです。
「湿地」
アイスランド、レイキャヴィクの湿地にあるアパートで、老人の死体が発見。侵入の形跡はなし。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人事件としてすぐに解決かと思いきや、事は意外な展開に進んでいく。
明らかになる被害者の過去と悲しい真相。
著者はガラスの鍵賞2年連続受賞の快挙を成し遂げ、CWAゴールドダガーを受賞しています。
「ミレニアム シリーズ1〜6」
北欧ミステリの真骨頂「ミレニアム」、ハッカーでゴスメイクのミステリアスな女性「リスベット」と、有名雑誌ミレニアムのジャーナリスト「ミカエル」。接点の全くなかった二人が偶然に出会い、スウェーデンの地で事件に巻きこまれていきます。
リスベットの圧倒的な個性と、自由人ミカエルの不滅のペア。
「水の葬送」
イギリス北部、シェトランド島を舞台にした四重奏の4作品の後に出た、ペレス警部のシリーズ。
シェトランドという独特の文化を持った島の暮らし、平らな地形、変わりやすい天候、牧歌的な島で起こる殺人事件。
知り合いばかりで、なかなか真相を話さない島民相手にペレス警部はどうやって真実へ至るのか。