「殺しへのライン」アンソニー・ホロヴィッツ:著 創元推理文庫
ストーリー
作家のアンソニー・ホロヴィッツは、新刊『メインテーマは殺人』の宣伝を兼ねて、
探偵ダニエル・ホーソーンとともにチャンネル諸島のオルダニー島で開催される文芸フェスティバルへ。
牧歌的だと思われたオルダニー島では、変電所の設立をめぐった島民の静かなる争いが勃発していた。
推進派リーダーであり文芸フェスのスポンサーであるチャールズ・ル・メジュラーが死体で見つかり
ホーソーン&ホロヴィッツは事件解明を地元警察に依頼されるが、、
アンソニーの目線で描かれる、元刑事で奇人で天才肌のホーソーンとその名推理。
プラス情報
ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズは10作を予定
『カササギ殺人事件』の続編
読むネコポイント
ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズの三作品目です。
本作では、これまでの舞台ロンドンを離れ、チャンネル諸島のひとつ、オルダニー島が舞台です。
フランス北部のノルマンディーとグレートブリテン島の間に点在する島々は、
過去の戦争の歴史が色濃く残るガーンジー等などが有名ですね。
地理的に面白いので、⇩映画やドラマ作品も多いです。
ホロヴィッツは、出版社やプロモーターが、ホーソーンばかりに注目するのに嫉妬し(笑)、
経験値が高い文芸フェスティバルで、ホーソーンに先輩風を吹かせようと目論みます。
二人連れ立ちオルダニー島へと旅立つのですが。。
犯罪オタクとばかり思っていたホーソーンは、実に如才ない振る舞いで、
読者ばかりか、参加の作家陣も虜にし、常に注目の的。
ホロヴィッツの完全な敗北とともに、負け犬発言連発がけっこう笑えます。
高機能自閉症ぎみかと思ったら、
きちんと社会性も持ち合わせていたホーソーンの意外な側面が本作で明らかになります。
個人的にホーソーンのイメージは、45歳くらいのボサボサ髪の少年のようなおじさん、
いわゆる、くたびれてるけどなんだか可愛げのある中年、だったのですが
なんと、なんと、、
39歳、長身やせぎす、短髪をスッキリとまとめ、スーツをスッキリ着こなす男性
いわゆる英国紳士風の雰囲気のある格好いい男性であることが判明します。
その他にも本作では、息子との逸話や警察での過去も少しずつ解禁され、
”変わっているけど有能な変人”というくくりではなくなってきます。
登場人物は、皆怪しいです。
盲目の霊能者夫婦、感じの悪いフランスの詩人、オルダニー島在住の歴史研究家、フェスティバル開催者夫妻(恐妻と大人しい夫)。
殺された貴族のセレブでCEOで、クソがつくほど嫌な奴 チャールズに、寄宿学校同級生だったセレブシェフ、クセが強過ぎな人多めです。
唯一まともな児童文学作家のアン・クリアリーだけは、ホロヴィッツに親切です W
事件はアガサ・クリスティを彷彿とさせる、
なんだか犯人側にも色々理由があって、少し感情移入してしまうわ〜という同情の余地がある感じ。
そんな中、死に損みたいな登場人物に、一言もうしたくなる。
嘘でしょう! デレク・アボット!ただの咬ませ犬じゃん。
ただし、今後ホーソーンの過去がわかる際に、要となる重要な人物なんだろうな、と予測されます。
今後全10作は続くこのシリーズ、ホーソーンの影のある人物像や、そう考えると能天気でちょっと腹も立つホロヴィッツ w
絶妙なバランスのペアの次作が待たれます!!