【 ミセス・ハリス、パリへ行く 】悪人のいないワールドが心地良い

映画公開間。ポール・ギャリコ名作「ミセス・ハリス、パリへ行く」(旧題:ハリスおばさんパリへ行く)新装版

「ミセス・ハリス、パリへ行く ポール・ギャリコ:著  KADOKAWA

ストーリー

1950年代のロンドンで通いの家政婦をする、真面目なおばさん、ハリスさん。

通いのお金持ちの家で、偶然目にした ”クリスチャン・ディオールのドレス

あまりの衝撃に、彼女の生活は一変する。

何度も夢に見たドレスを、自分で手に入れることを決心したハリスおばさん

お友達のバターフィールドおばさんに助けてもらったり、

一攫千金をねらったり、とにかくお金を貯るのに精を出します。

念願叶い旅立ったパリで、クリスチャン・ディオールメゾンの扉は開かれるのか。

読んだ人の心根を温かくする物語。




プラス情報

ポール・ギャリコ
1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。ニューヨーク・デイリー・ニュースでスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。
その後ミセスハリスは4作執筆。



読むネコポイント

1950年代のロンドンが舞台です。昭和でいうところの25年で、

第二次世界大戦後5年、資本主義経済がどんどん伸びる前兆の頃でしょうか。

クリスチャン・ディオールが一大旋風を巻き起こしました。

元々管理人きょまタローは、アパレル関係の仕事をしていたのでフッション史を少し齧っております。

ディオールの「ニュールック」は新しい時代の女性のために作られ

ウエストがキュッと細く、スカートがふんわり広がるラインで、それはある種革命でした。

小規模なメゾンだったのが、オートクチュールのトップへ駆け上ったのです。
 

 
そんな時代背景の中、

沢山の家のホームクリーニングをし、数をこなすことで生計を立てるハリスおばさん。

嫌いだと感じた家には2度と行かないなど、きっちりした心情をお持ちです。

当人はいたって真面目で、特に仕事では手を抜かず、雇い主からも絶大に信頼されています。

粋な心は忘れず、ユーモアを大事に、お金はないけれど心豊かに暮らしていましたが

とある裕福なマダムの洋服ダンスを開けてから人生が変わります。



なんか、夢がありますね ♡

真実一路で真面目にお掃除をし、たまに友達のバターフィールドおばさんと愚痴を言い合ったり

映画を見に行くことで日々過ごしてたはずが

1着の素晴らしいドレスに出会ったことで、とんでもない目標を立てます。

給料5年分くらいのドレスを、掃除のおばさんが買うことになんの意味があるの?と周りから反対されても、一向に気にせず

一攫千金で、せっかく貯めたお金をすってしまっても、大泣きした後に立ち直り

クリスチャン・デイオールのドレスを買うんだと邁進する、ハリスおばさん。

そこには悲壮感などなく、誰もが応援したくなるようなピュアな心があります。


クリスチャン・デイオールのメゾンの人々はハリスおばさんを前にして

茶化したり、適当にあしらったり、意地悪なことを言ったりと、ひどい態度をとります。

「欲しいから買いにきただけだ」と素直に泣き出すおばさん。

率直な物言いや、一生懸命努力しているのを目の前にし

洋服は金持ちに売るためではなく、本当に欲しい人に譲るべきでは、とメゾンのマダムは心打たれ、

積極的に協力するようになります。

ハリスおばさんに関わる全ての人間の心が浄化されていく様子が

なんだか、小さい頃に見たディズニー映画「メリー・ポピンズ」を思いだして、ちょっと涙が出ました。

説教くさい事は何も書かれてはおらず、淡々と出来事が綴られていくのも、心地よかったです。

映画、本、どちらもおすすめです。

きっと読後は、ほっこりした気持ちにさせてくれるでしょう。