「フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)」チョン・セラン:著 亜紀書房
ストーリー
とある韓国の都市部での、古く大きな総合病院とその周辺の人々を巡って
50人のドラマが交差したりしなかったりします。
韓国文学を牽引する新しい世代の若手作家による連作短編小説。
ライトで主観を交えず、淡々とユーモアを交えて語られる51のお話。
プラス情報
チョン セラン
1984年ソウル生まれ。編集者として働いた後、2010年に雑誌『ファンタスティック』に「ドリーム、ドリーム、ドリーム」を発表して作家デビュー。2013年、『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳、クオン)で第7回チャンビ長編小説賞、2017年に『フィフティ・ピープル』で第50回韓国日報文学賞を受賞。純文学、SF、ファンタジー、ホラーなどジャンルを超えて多彩な作品を発表し、若い世代から愛され続けている。童話、エッセイ、シナリオなども手がけている引用: BOOK著者紹介情報より
読むネコポイント
韓国の文化、すごく変化してきているのですね。
ニューエイジなんだなと思わずにいられませんでした。
急激な経済発展や文化背景が進んだことで、孫、子、親 三世代の価値観の相違が激しく
それらが混じり合っている現在の作品が、大変パワーを持っている、と。
アイドルのBTSは全米チャートで1位、世界のスターになりました。
そして【第92回アカデミー賞】では、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が国際長編映画賞です。
今現在元気のない日本経済や文化と比較して勢いに乗っている韓国。
当然こちらの小説 フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1) も読みやすく
面白い内容に仕上がっていました。
個人の印象で、韓流は「思いが熱い」というのがありましたが、
2020年、アメリカ(も熱いイメージです)始め、新しい世代の人は淡々としているのですね。
心に熱い思いはあるけれど、それをそのままストレートに表現するのは、少し違うのかもしれません。
シニカルな目線で現実を見つめ、ありのまま時にウィットに包んで距離を持って表すような
作者の少し冷めた目線の位置付けでしょうか。
それは、主観を入れて歪めたくない、かといってあまりにも現実のみでは辛い、、、
殺伐として辛い世の中になりつつある象徴のように思わずにはいられません。
フィフティ・ピープルも、ほんわかしたり、ゾッとしたり、思わず笑ってしまったり、涙が浮かんできたりする話が、51話展開されていきます。
登場人物が多岐に渡り、たまーに又出てきたりするので面白い仕組みです。
主役を作りたくない、という著者の気持ちは
生きとしいけるすべての人にかけがえの無い人生(ストーリー)があることを物語っています。
ポール・オースターを初めて読んだときのような読後感でした。
文章が苦手、小説を普段読まない人でも、サクサクと読み進められるリズム感のある軽い文章ですよ。
でも、実は韓国社会全体を語っているので、読んだ後は隣国にいろいろと思いを馳せることでしょう。