【 アーモンド 】はスマートとグロさの混じり合う韓流青春成長小説

アーモンド2019/7/11ソン・ウォンピョン(著)矢島暁子翻訳韓国韓流文学

「アーモンド」ソン・ウォンピョン:著 祥伝社

ストーリー

韓国の水踰洞(スユドン)、脳の感情を司る扁桃体が生まれつき小さいため

「喜」「怒」「哀」「楽」を感情として理解できないユンジェ

母は、ユンジェに「喜怒哀楽」の他、愛、悪、欲などをパターン化し丸暗記させ、

平凡な生活で目立たず生きていけるよう訓練する。

15歳の誕生日、クリスマスの食事に家族で出かけ、祖母と母が通り魔に襲われるのを目の前にするが

ユンジェは黙ってその光景を見つめて立っていただけだった。

祖母は亡くなり、母は植物状態になり、ユンジェは天涯孤独に。

事件後に出会う人々、ゴニ、シム博士、ユン教授、同級生ドラにより

ユンジェの人生が大きく変化していく。

彼は本当に失感情症なのか?!



プラス情報

2020年 本屋大賞翻訳小説部門 第1位

ソン・ウォンピョン
1979年、ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、第6回『シネ21』映画評論賞受賞。2006年、「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本、演出を手掛ける。2016年、初の長編小説『アーモンド』で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞して彗星のごとく登場(2017年刊行)、多くの読者から熱狂的な支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、シナリオ作家、小説家として、幅広く活躍している

引用: book著者紹介情報より

 




読むネコポイント

韓国文学が最近とても評価され読まれています。

文化度がどんどんと上がっているのは、パラサイトのアカデミー賞受賞などからもうかがえますね。

韓国文化は、急成長した経済を元に新世代の持つスノッブさ、淡白さと

旧世代の民族的な熱い思いを象徴するかのようなグロさ、が入り混じっている

その不確定な割合が作品の魅力につながっているように感じます。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)2018/9/28、チョン・セラン:著,斎藤真理子:翻訳亜紀書房

【フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)】で知る新たな韓国

2020年11月5日
こちらの「アーモンド」は表紙もイラストであり、

さらっとした文体で、リズム良く話が進んでいき、とても入っていきやすかったです。

ですが、あらすじは、さらっとはしていません。

脳の作りにより生まれつき感情というものが薄い主人公「ユンジェ」。

母子家庭 + パワフルなおばあちゃんの3人暮らし。

明るい祖母と、出戻りの母はしょっちゅう口喧嘩をしてはいるものの

母は商売で古本屋を始め、裕福とは言えないながら慎ましく日々を暮らしています。

母は感情というものを理解できずに、表現しないユンジェに不安を感じつつも愛を注ぎ

平凡な暮らしをして欲しい、異分子になって欲しくないとの思いから

感情表現のパターンを勉強させたりもします。

が当の本人がそれ自体に意味を見出せず、母が納得するならと受け入れているだけ。

あるクリスマスの日、無差別通り魔殺人事件に巻き込まれ、ユンジェの目の前で

祖母は亡くなり母は植物状態の被害者に。

この世でひとりぼっちになってしまったユンジェ。悲しいという気持ちもよくわかりません。



事件を境に、古本屋の2階に住む店子の大家、パン屋を営むシム博士、

自分と似ている何かを持つ問題児、怪物 ゴニ、

陸上選手の颯爽とした群れない少女 ドラ

と出会う中で、ユンジェは自分の中の何かが変わっていく感覚を

受け止めきれずにある事件に巻き込まれます。その結末は、、

かわいい怪物の物語です。