「アーモンド」ソン・ウォンピョン:著 祥伝社
ストーリー
韓国の水踰洞(スユドン)、脳の感情を司る扁桃体が生まれつき小さいため
「喜」「怒」「哀」「楽」を感情として理解できないユンジェ。
母は、ユンジェに「喜怒哀楽」の他、愛、悪、欲などをパターン化し丸暗記させ、
平凡な生活で目立たず生きていけるよう訓練する。
15歳の誕生日、クリスマスの食事に家族で出かけ、祖母と母が通り魔に襲われるのを目の前にするが
ユンジェは黙ってその光景を見つめて立っていただけだった。
祖母は亡くなり、母は植物状態になり、ユンジェは天涯孤独に。
事件後に出会う人々、ゴニ、シム博士、ユン教授、同級生ドラにより
ユンジェの人生が大きく変化していく。
彼は本当に失感情症なのか?!
プラス情報
2020年 本屋大賞翻訳小説部門 第1位
ソン・ウォンピョン
1979年、ソウル生まれ。西江大学校で社会学と哲学を学ぶ。韓国映画アカデミー映画科で映画演出を専攻。2001年、第6回『シネ21』映画評論賞受賞。2006年、「瞬間を信じます」で第3回科学技術創作文芸のシナリオシノプシス部門を受賞。「人間的に情の通じない人間」、「あなたの意味」など多数の短編映画の脚本、演出を手掛ける。2016年、初の長編小説『アーモンド』で第10回チャンビ青少年文学賞を受賞して彗星のごとく登場(2017年刊行)、多くの読者から熱狂的な支持を受けた。2017年、長編小説『三十の反撃』で第5回済州4・3平和文学賞を受賞。現在、映画監督、シナリオ作家、小説家として、幅広く活躍している引用: book著者紹介情報より
読むネコポイント
韓国文学が最近とても評価され読まれています。
文化度がどんどんと上がっているのは、パラサイトのアカデミー賞受賞などからもうかがえますね。
韓国文化は、急成長した経済を元に新世代の持つスノッブさ、淡白さと
旧世代の民族的な熱い思いを象徴するかのようなグロさ、が入り混じっている
その不確定な割合が作品の魅力につながっているように感じます。
さらっとした文体で、リズム良く話が進んでいき、とても入っていきやすかったです。
ですが、あらすじは、さらっとはしていません。
脳の作りにより生まれつき感情というものが薄い主人公「ユンジェ」。
母子家庭 + パワフルなおばあちゃんの3人暮らし。
明るい祖母と、出戻りの母はしょっちゅう口喧嘩をしてはいるものの
母は商売で古本屋を始め、裕福とは言えないながら慎ましく日々を暮らしています。
母は感情というものを理解できずに、表現しないユンジェに不安を感じつつも愛を注ぎ
平凡な暮らしをして欲しい、異分子になって欲しくないとの思いから
感情表現のパターンを勉強させたりもします。
が当の本人がそれ自体に意味を見出せず、母が納得するならと受け入れているだけ。
あるクリスマスの日、無差別通り魔殺人事件に巻き込まれ、ユンジェの目の前で
祖母は亡くなり母は植物状態の被害者に。
この世でひとりぼっちになってしまったユンジェ。悲しいという気持ちもよくわかりません。
事件を境に、古本屋の2階に住む店子の大家、パン屋を営むシム博士、
自分と似ている何かを持つ問題児、怪物 ゴニ、
陸上選手の颯爽とした群れない少女 ドラ
と出会う中で、ユンジェは自分の中の何かが変わっていく感覚を
受け止めきれずにある事件に巻き込まれます。その結末は、、
かわいい怪物の物語です。