「国語教師」ユーディト・W・タシュラー:著 集英社
ストーリー
十六年ぶりに偶然再会した、元恋人同士の男女。ふたりはかつてのように物語を創作して披露し合う。作家のクサヴァーは、自らの祖父をモデルにした一代記を語った。国語教師のマティルダは、若い男を軟禁する女の話を語った。しかしこの戯れこそが、あの暗い過去の事件へふたりを誘ってゆく…。物語に魅了された彼らの人生を問う、ドイツ推理作家協会賞受賞作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
タシュラー,ユーディト・W.
1970年、オーストリアのリンツに生まれ、同ミュールフィアテルで育つ。外国での滞在やいくつかの職を経て大学に進学、ドイツ語圏文学と歴史を専攻する。家族とともにインスブルック在住。国語教師として働く。2011年『Sommer wie Winter(夏も冬も)』で小説家デビューし、現在は専業作家。2013年に発表された『国語教師』は2014年度のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)長編賞を受賞した引用: 「BOOK」データベース
プラス情報
タシュラー,ユーディト・W.
1970年、オーストリアのリンツに生まれ、同ミュールフィアテルで育つ。外国での滞在やいくつかの職を経て大学に進学、ドイツ語圏文学と歴史を専攻する。家族とともにインスブルック在住。国語教師として働く。2011年『Sommer wie Winter(夏も冬も)』で小説家デビューし、現在は専業作家。2013年に発表された『国語教師』は2014年度のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)長編賞を受賞した引用: BOOK著者紹介情報より
読むネコポイント
断片的に語り進められるストーリー。
過去に凄まじい結びつきを感じ合いながら生活をともにし愛し合った男女が、16年の時を経て偶然か必然か再開を果たします。
小説家のクサヴァーは、何作かのヒット作がありますが、それ以後はくすぶり続けアルコール依存の過去も。
現在は、大嫌いであった封建的な一族の象徴である地方の旧家を母親から引継ぎ、たった一人で孤独に暮らしています。
特別な関係であったはずの男女は、彼の裏切りとも言える突然の別れで終結。
その後の大富豪の娘との政略的な結婚、かりそめのセレブ生活がクサヴァーの口から語られます。
マチルダは現在国語教師、きちんとした生真面目な性格で、今だに一方的に去っていったクサヴァーに対し遺恨が拭えません。
冷静な彼女の口から、彼への熱い思いがとうとうと語られます。
二人の祖先まで遡り、家、家族、兄弟、仕事、愛、生きるとは何か
とりわけ「真実」とはなんなのかを考えさせられます。
事象は同じでも、クサヴァーとマチルダそれぞれの背景や性格により、捉え方は全く異なります。そして本人が〇〇だった、と信じれば
それはその人にとっての「本当のこと」となります。
各々の真実がメールや対面で交わされるうちに
調子が良く見栄っ張りで虚構の中に生きようとするクサヴァーのベクトルと
意思は強いけれど決して意見を曲げないマチルダのベクトルが重なり合い、
その時それまで隠され続けていた秘密が解き明かされるのです。
ミステリー要素と私小説のような語り口で、ぐいぐいと話に引き込まれていきます。
大きな展開や仕掛けがあるわけではないですが、二人の人間の表裏が描かれていて、国や境遇が違えど面白く読み進められる小説だと思います。