「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ:著 早川書房
ストーリー
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。
引用: 「BOOK」データベース
プラス情報
オーエンズ,ディーリア
ジョージア州出身の動物学者、小説家。ジョージア大学で動物学の学士号を、カリフォルニア大学デイヴィス校で動物行動学の博士号を取得。ボツワナのカラハリ砂漠でフィールドワークを行ない、その経験を記したノンフィクション『カラハリ―アフリカ最後の野生に暮らす』(マーク・オーエンズとの共著、1984)(早川書房刊)が世界的ベストセラーとなる。同書は優れたネイチャーライティングに贈られるジョン・バロウズ賞を受賞している。また、研究論文は“ネイチャー”誌など多くの学術雑誌に掲載されている。現在はアイダホ州に住み、グリズリーやオオカミの保護、湿地の保全活動を行なっている。69歳で執筆した初めての小説である引用: BOOK著者紹介情報
読むネコポイント
舞台背景はアメリカ南部の海に近い湿地、1970年代前後、 というと管理人きょまタローが生まれた頃です。
その頃のアメリカ南部ノース・カロライナ州というのがどうゆう雰囲気だったのか想像し難かったのですが、
この本を読むうちに半世紀前ですが、まだまだ人種差別が激しく、貧しかった時代だと納得。
主人公のカイアは貧乏白人、俗に言う トラッシュ で裸足で生活、街を歩いています。
父親の家庭内暴力で精神を病んだ母親は、子供を捨てて家を出て行ってしまいます。
5人兄弟は、一人減り二人減り、、カイアを置いて家を出て行き、残る父親もカイアが6歳の時行方不明に。
誰もいない湿地で、たった一人でカイアは生きていくのを受け入れざるえないことに。
恵み豊かな湿地や海で、貝を掘り、魚を釣ることでどうにか生計をたて、学校には行かず
字も読めず足し算引き算もできないカイアは、一体どうなっていくのか、、
自然豊かな湿地で、友達はカモメのみ、そんなカイアにも少しずつ顔見知りができていきます。
釣りに訪れるテッド少年、貝を買い取ってくれる雑貨屋、どちらもカイアに同情し優しく接してくれます。
カイアの孤独、絶望、期待、全て湿地が受け入れて、自然と共に生きていく様子が、心洗われるよう。
繊細な彼女は湿地の機微をかぎとり、そこで暮らす生物を見つめ続け日々を過ごすわけですが
人間関係の裏切りを何度も受けることで、心の壁が高くなり誰も受け入れようとしなくなります。
その一方で美しい女性に成長し、街の有名人チェイスと出会い恋に落ちるのですが
そこには悲しみと、殺人、不可解な謎が、、、 そして意外な結末へと進みます。
嘘みたいな背景ですが、実際この時代にはあったのかも、と思わせる作品です。
カイアも、著者が女性なだけに、とてもリアリティがあります。
タイトルがいいですね 「ザリガニの鳴くところ」
湿地の奥の奥、人が入ってこないような場所、自然だけが泰然と広がる場所のことだそうです。
裁判の様子、ミステリー要素、など盛り沢山なはずなんですが、するっと読めました。
さすが人気の高い本、期待の著者の次の新作が待ちどしいです。