「窓辺の愛書家」リチャード・オスマン:著 東京創元社
ストーリー
自然死と思われた90代のペギー・スーだったが、しゃべり友達エドウィン、カフェオーナーのベネディクト、
彼が思いを寄せるウクライナ出身の介護士ナタルカが、行き当たりばったりではあるが、真相を突き止めることに。
怪しい息子夫婦をはじめ、ペギーの隠された過去や「殺人コンサルト」なる職業、
関係のあった有名小説家ディックス・チャロナーが殺されたことにより、
3人の素人探偵衆はスコットランドのエディンバラの犯罪小説フェスティバルへ。
ウェスト・サセックスの刑事ハービンダーはナタルカらと協力し、真相を突き止めようと奔走するが如何に。
プラス情報
週刊文春ミステリーベスト10の第3位『見知らぬ人』の著者 エリー・グリフィス
ハービンダー刑事シリーズの第二弾
読むネコポイント
いやいや、1作目の「見知らぬ人」を読んでいないんです。
手の中にあり、序盤は読んだにも関わらず、なぜかハマらなかったのです。
原因は、文庫本の字がぎっしりしていて、さらに暗い内容なのかと勝手に思い込んでしまったせいでしょう。
ここで謝りたいです。
このシリーズ面白いです。
ハービンダー刑事を初め、今回の準主役であるナタルカ、魅力いっぱいです。
女性作者の場合、女性の内面などの描写が濃いい目で少し苦手なものもあるんですが
こちらエリー・グリフィスさんのお話は、全体的にユーモア漂う、
高キャリアやインテリ女性がシニカルで、且つ「さらっ」と重くなく描かれているので、読んでいて爽快です。
そしてメインの男性陣は、そうです。
オトメンだったり、ゲイだったり、繊細さんだったり W
煮え切らない感情がぐちゃぐちゃと語られていたりで、なんとも可愛らしい印象を持ちます。
もちろんオトコ男した、こじらせ男子も出てきますが、
ハービンダーやナタルカは適当にいなして「はいはい、マッチョはね(心の声)」といった具合です。
この女子二人の胸の内は、辛辣で面白いですよ。
主役のハービンダーはインド系の英国2世です。
男社会の警察組織で、有色人種で、更に女性で、さらにさらに同性愛者です。
マイノリティが何層にも重なる中、人の良い両親2人+犬、と同居しながら
「パンダポップ」という携帯ゲームをやめられない日々を、どうにかこうにか帳尻をつけながら頑張っています。
そんな様子が、呑気なジョークと共に語られるので、読んでいて居心地が良かったりします。
個人的には2世のインド系イギリス人の葛藤やインド文化、
何よりたくさん美味しそうな料理(ハービンダーのお母さんは料理上手)、チャパティ、ビリヤニなどなど。
知らない炭水化物料理やお菓子が出てきて(必ず解説がついている)、興味津々でした。
今回は、老人共同施設で暮らすペギーが亡くなったことが発端となり、
有名小説家との親交や殺人コンサルタントなる肩書き、謎のポストカードの文言、の謎が残されます。
勘が良く行動的な介護士ナタルカが、大人しいベネディクトやエドウィンを引っ張る形で謎解きを始めます。
元修道士のベネディクトはナタルカがキラキラ眩しい存在で、一緒に何か行動できるだけで幸せ。
この二人をくっ付けたいと思うエドウィン(といっても特に何もしない、それがエドウィン w)。
3人はエディンバラまで、誰にも頼まれていないにも関わらず、犯人を捕まえようと遠征【旅】します。
その先でも第二の殺人が起こり、後から追いついたハービンダーと一緒に事件解明となるのか。
後半は、登場人物多めで大丈夫かと思いましたが、一人一人の個性もちゃんと描かれており
最後までハラハラさせてくれましたよ。
シリーズ第3作 「Bleeding Heart Yard」も本国イギリスでは刊行済み、
翻訳が待たれますね♡