「苦悩する男」ヘニング・マンケル:著 創元推理文庫
ストーリー
スウェーデンの南マルメ、刑事のクルト・ヴァランダーシリーズの最後の事件。
同じ刑事になった娘リンダは子供を産み産休中。
夫ハンスの父である、貴族で退役した海軍司令官のホーカンが失踪する。
個人的に捜査を頼まれた休暇中のヴァランダーは、ホーカンの過去を探るが真相になかなか近づけない。
そんな中、妻のルイースが自殺するが、それは限りなく殺人に近いものだとヴァランダーは気がつく。
ホーカン、ルイース夫妻の謎を解きながら、ヴァランダーは不調を感じるが現実を認められない。
リンダとの関係、孫のルイースへの愛情、退職が間もない焦り、元恋人のヴァイパの死、
ヴァランダーの憂い、初老男性の苦悩と踏ん張りが描かれる。
プラス情報
著者:ヘニング マンケル
小説 刑事ヴァランダーシリーズ
1,殺人者の顔 / 2,リガの犬たち / 3,白い雌ライオン / 4,笑う男 / 5,目くらましの道 / 6,五番目の女 / 7,背後の足音 / 8,ファイアーウォール / 9,ピラミッド / 10,霜の降りる前に / タンゴステップ(著者によると番外編) / 11,北京から来た男/ 12,苦悩する男 / 13,手
読むネコポイント
大大好きなシリーズです。
ヘニング マンケル氏が既に亡くなっていることから
次作の「手」(ヴァランダーの過去の話)が作品として最後になってしまうのが、大変寂しい限りですが
本作が事件としては最後の話で、ヴァランダーシリーズがどうなって終結するのか、ワクワクもしながら読みました。
本作は読んだ後に、是非アマゾンプライム「刑事ヴァランダーシリーズ シーズン4」の2話、3話と合わせて見るとより楽しめますよ。
ドラマについてはこちらに掲載しています。
福祉の優等生な国のイメージのみでしたが、読み進むうちに
移民問題や、ロシアの脅威、ヨーロッパ諸国との関係が見えてきて、
そして本作ではアメリカとソ連の「冷戦」で、北欧の社会情勢が身近に感じられるようになりました。
隣国のフィンランド(ジェイムズ・トンプソン「凍氷」)や、デンマーク(特捜部Q)、ポーランドの警察小説なども読むように。
ヘニング マンケルさんの本は、出版されれば読んでいましたが、やはりクルト・ヴァランダー警部シリーズは愛着があります。
ヴァランダーおじさんは読んでいると応援せずにはいられないです。
いつも怒ってる、自分に、他人に。でも少しいい事があれば忘れてしまう単純なヴァランダー。
大真面目で生きていますが少し抜けているし、自分にダメ出しをするくだりには 「ふふふ」と笑ってしまいます。
残り一作でもう会えないんだなぁと思うと寂しくはありますが、
ヘニング・マンケル氏の流れを継承した作者がまた出てくるであろうことを期待しながら、
残してくれたたくさんのドラマや小説を再度堪能したいと思います。