「手/ヴァランダーの世界」ヘニング・マンケル:著 東京創元社
ストーリー
スウェーデン警察イースタ署のクルト・ヴァランダー警部は、同僚のマーティンソンに田舎の一軒家を紹介される。
広い郊外の家で犬を飼いたいと考えていたヴァランダーは早速物件を見に行く。
しかし、裏庭を何げなく見ていると、そこには地面から突き出した人間の骨が。
2体の骸骨、50年以上前の死体から一体どこまで突き止めることができるのか、捜査が始まる。
何度もどん詰まりに陥りかけるが、刑事の性、ヴァランダーの激しい気概で事件は少しづつ進展していく。
中短編「手」は最終話の「苦悩する男」よりも前に書かれた作品、しかしシリーズ最後の出版となった。
その他、ヘニング・マンケル氏による、ヴァランダー登場の経緯、シリーズ各作品と登場人物、地名の紹介などが掲載。
ファンは読み逃せない内容となっている。
プラス情報
著者:ヘニング マンケル
小説 刑事ヴァランダーシリーズ
1,殺人者の顔 / 2,リガの犬たち / 3,白い雌ライオン / 4,笑う男 / 5,目くらましの道 / 6,五番目の女 / 7,背後の足音 / 8,ファイアーウォール / 9,ピラミッド / 10,霜の降りる前に / タンゴステップ(著者によると番外編) / 11,北京から来た男/ 12,苦悩する男 / 13,手
読むネコポイント
【刑事ヴァランダー/クルト・ヴァランダー警部シリーズ 】の本当に最後に出される本となりました。
いったい何年間ヴァランダーおじさんと共に過ごしてきたことでしょう。
悲しいですが、2015年ヘニング マンケル氏が亡くなり、今後名作として読まれていくのを願うばかりです。
本作「手」は2002年ヴァランダーは50代前半ばでイースタ署の中堅警察官、
難事件をいくつも解決し同僚からの信頼が厚いですが、プライベートは満たされていません。
警官をもう辞めてしまいたい、といつもの如く考えたり(なんか、可愛らしいんですけどね w)
警察官になった娘リンダとの同居が、イライラしたり慰められたり、で葛藤も大忙しです。
ヴァランダーが悩めば悩むほど、読者は作品に思いを入れて読んでしまう、そんな魅力のあるシリーズです。
今回はせっかくときめいた田舎の農家、飼う犬の妄想までしてたのに、裏庭で手の骨を見つけてしまったことで全てがダメになり、
その反動も手伝って、がむしゃらに解決困難な古い事件を一歩一歩進め、犯人を追い詰めていくわけです。
リンダがフックとなり、いい味出してます。少し面倒くさいところもある娘さんですが、
親子は似たもの同士でもあり、父娘・師弟の絆のようなものは深まります。
その後の作品で、ヴァランダーは黒のラブラドールのユッシと、田舎暮らしで新しい世界へ進んでいきます。
このシリーズはどの作品から読んでも大丈夫、面白いですよ。
ちなみに管理人はあまり星の多くない「北京からきた男」で初めてヴァランダー警部を知りました。
全然前知識がなく読んだのですが、文体が独特で読後感が不思議な印象が残りました。
押し付けがましくはない熱い思い、が淡々と語られているような感じ。
優等生スウェーデンのお国柄かと思いましたが、どうやら違った w
それこそがこのシリーズの魅力なんだと、と今はわかります。