「特捜部Q―アサドの祈り―」ユッシ・エーズラ・オールスン:著 早川書房
ストーリー
キプロスの浜辺に、難民とおぼしき老女の遺体が打ち上げられた。新聞で「犠牲者2117」として紹介された彼女の写真を見たアサドはうちのめされ、慟哭する。彼女は、彼が失った最愛の家族とのつながりを持つ人物だったのだ。アサドはついに自らの壮絶な過去を特捜部Qに打ち明ける。一方、Qには若い男から殺人予告の電話がかかってきた。当初はいたずらかと思われたが本気のようだ。Qの面々は、男が凶行にいたるまえにその所在をつきとめられるのか?ついにアサドの素性が明らかになる、シリーズ激動の第八弾!
引用: 「BOOK」データベース
プラス情報
特捜部Q―檻の中の女―
特捜部Q―キジ殺し―
特捜部Q―Pからのメッセージ―
特捜部Q―カルテ番号64―
特捜部Q―知りすぎたマルコ―
特捜部Q―吊された少女―
特捜部Q―自撮りする女たち―
特捜部Q―アサドの祈り―(2020/7)
特捜部Q―カールの罪状―(2023/6/6)[/col2]
映画化もされています
読むネコポイント
シリーズ第8段目、ついに「特捜部Q」のミステリアスなムードメイカー
謎の中東系デンマーク人”アサド”の出自が明かされるのです。
新刊が出るとウキウキするシリーズの1つである「特捜部Q」ですが、
アサドが主役で、彼の過去の全貌(多分壮絶だと想像)が解き放たれてしまう、、
読む方としては知りたいんですが、これまでアサドがデンマークに住むヘンテコなイスラム信者で
「ラクダは・・・」という聞いたこともない格言を使ったり、
信じられないくらい戦闘慣れして強かったり、
なぜデンマーク警察に雇われているのかわからなかったりで
とにかく癖が多アリな面白人物だったわけです。
そのベールが剥がされてしまう、そんな寂しさもあるんですよね。
さて、今回は殺人捜査課課長ラース・ビャアンが亡くなり、アサドは引きこもっているローセの部屋を訪ね、
とある新聞の写真記事の切り抜きを見つけたことから、話は発展していきます。
大掛かりなテロへと発展すると同時に、引きこもりゲーマー青年の殺人予告電話事件も進行する中
引きこもってしまったローセが、子豚さん体型になって「特捜部Q」に戻ってきたり
モーナとカールが飛躍して、関係が発展しまくったりと、そんな内容も絡んできます。
マーク大変です。
心の中で悪態をつきまくりながらも、でも結局全部面倒みるところが
使命感の強いデンマーク中年おじさんのいいところです。
「特捜部Q」の魅力は、ハードな内容であっても、どこか破綻した部分の見え隠れする登場人物
マーク、アサド、ローセ、ゴードンらが、正攻法じゃない攻め方で事件を追うところでしょうか。
どこかすっとぼけていて可笑しいのです。
その大真面目ですかす代表が「アサド」、その彼の過去・家族のことが語られる「特捜部Q―アサドの祈り―」読み応えあり! です。
シリーズをこれまで読んでいない人も、現在の中東情勢や移民問題など、デンマーク、ドイツにまたがり
クライム小説としても堪能できること間違いありません。