「喪われた少女」ラグナル ヨナソン:著 小学館文庫
ストーリー
アイスランドレイキャヴィーク警察の女性警部フルダ・シリーズ第2作。
衝撃の前作『闇という名の娘』の15年前に起こったアイスランド西部フィヨルドでの殺人事件から物語は始まる。
1978年の「父親の娘殺し事件」は、レイキャヴィーク警察のリーズルが解決へと導いた。
が、その裏には隠された幾つもの影が。
その10年後に「殺害された女性を偲ぶ会」が西部フィヨルドで、故人の仲間4人で開かれる。
亡くなった女性の弟ダーグルとその親友ベネディフト、女性の親友クラーラとアレキサンドラは絶海エトリザエイ島にひとつしかないロッジで過ごすが、仲間の一人クラーラが崖から転落死する。
レイキャヴィーク警察のフルダが捜査を進めるうちに10年前の事件に隠された事実や、孤島での殺人事件の真相に迫りつつ
フルダの出生と父の秘密が語られ、過酷な寒さのアイスランド島、
フルダ刑事の人間ドラマ、事件によって人生を狂わされた幾つもの物語がシンクロしながら進んでいく。
プラス情報
アイスランドレイキャヴィーク女性警部フルダシリーズ
1作目 闇という名の娘
2作目 喪われた少女
3作目 閉じ込められた女
ラグナル ヨナソン
アイスランド首都のレイキャヴィーク出身。小説執筆の傍ら、弁護士としても活動している。英国推理作家協会(CWA)会員引用: BOOK著者紹介情報より
読むネコポイント
衝撃的な「闇という名の娘」から始まった三部作シリーズの第2段です。
暗いのです。
寒いし。
主人公のフルダの悲しすぎる過去は第一段で語られているのですが
その内訳を知っていると辛すぎる少し若かった頃のフルダの事件簿です。
*シリーズは結末から始り、過去に遡っていくタイプです
1980年代フルダが家族を失い、その悲しみを打ち消すために仕事に過度に邁進していく中で女性差別により出世が叶わない現実。
順調に出世街道を進む元部下リーズル(現上司)の過去の事件とつながりのある事件が、西部フィヨルドで起こります。
不慮の事故と思われた女性の転落でしたが、自殺、さらには殺人事件へと様変わりし、
リーズルの出世のきっかけとなった1970年代の父親が娘を虐待し殺した事件と結びつき、二つの事件は完全に繋がっていきます。
読んでいて暗ーーーーい気持ちにはなりますが
癖になります。
ある意味ダークサイドの居心地に良さってやつかもしれません。
思考停止で暗闇にいると、何にも考えずにいられますよね。そんな感じ。
でもフルダは負のパワーを逆転させて事件を解決していくので
いやでも現実を生きる女性のやり切れなさとともに、清々しさアイスランドの零下を感じずにはいられません。
女性はしぶとく「負けへんでーー」の精神で1日1日を泥臭くどうにか消化していくんです
でもそれはスタートの第一作を読んでこそ、胸に滲み入るよう。
三作目はこれを超える哀愁や絶望なのか、それとも希望があるのか、、
第三作「閉じ込められた女」は7/6発売です。